
2008年公開の劇場版第12作目。タイトルは“旋律”と“戦慄”をかけているという事を後から知って「なるほどね」と感心してしまった映画。
主題歌はZARDの「翼を広げて」
ゲスト声優として、山里亮太さん、坂下千里子さん、西尾由佳理さんが出演している。
キャッチコピーは、「この歌声を、消させはしない。」「この指が奏でるのは、真実を導く旋律(しらべ)…」
※ネタバレありますのでご注意ください。
『戦慄の楽譜(フルスコア)』の内容。あらすじと結末
全ての始まりは堂本音楽アカデミーでの爆破事件
堂本音楽アカデミーで爆発が起こり、アカデミーの門下生が2人死亡、ヴァイオリニストの河辺奏子が重症を負った。フルートの胴部管が事件現場から見つかる。
新一と電話する蘭は、園子の口利きで堂本ホールのこけら落としコンサートが見られることになったと伝える。なぜなら堂本ホールを作ったのは鈴木建設だから。
ここでも鈴木財閥の力を見せつけられる。どれだけ大きい会社なのだろうか。
事件現場である堂本音楽アカデミーに来ていたコナンは、新一の声で蘭と電話をしながら、現場を調査する。そこで、ピアノの鍵盤の破片を持ってたたずむ譜和を見かける。
コナン:コナンとしてなら素直になれるんだけどなぁ…
ぼそっとつぶやくコナン。
爆発事件の翌週、こけら落としコンサートのリハーサルを見学するコナン・蘭・園子・小五郎・少年探偵団・阿笠博士。ホールの脇には目暮警部たちの姿もあった。
爆破事故でケガをした河辺奏子の代役として、山根紫音がストラディバリウスを借りて演奏する。
秋庭怜子と殺害された4人の関係
少年探偵団がリハーサルで出会った、ソプラノ歌手・秋庭怜子。彼女は帝丹小OGだった為、歌唱指導をしてくれることになった。
秋庭怜子は絶対音感の持ち主で、他には、爆発に巻き込まれた河辺奏子や、堂本の専属ピアノ調律師だった譜和匠も絶対音感を持っている。意外なことにコナンも絶対音感を持っている事が発覚。
襲われる秋庭怜子
合唱練習中、秋庭の持参している水筒のお茶を勝手に飲んだ元太。お茶には刺激性の強い薬品が混入されていた為、元太は4日間、声が出せなくなってしまった。
もし秋庭が飲んでいたら、確実にコンサートの舞台には立てなくなっていた。
病院からの帰り道、元太を家まで送るコナン・少年探偵団・園子・秋庭。その途中、ダンプカーに追いかけられる。犯人には逃げられてしまうが、明らかに秋庭を狙った犯行だった。
そんな中、堂本アカデミーの1期生が次々と殺害される。現場からはフルートの足部管と頭部管が見つかっていた。
亡くなった4人には共通点があり、2年前までピアノカルテットを組んでいた。
そしてもうひとつ、秋庭の婚約者であった、フルート奏者・相馬光を殺害した可能性があること。
4人は、3年前の合宿で、お酒が飲めない相馬に無理やり酒を飲ませた。そして相馬は酔って崖から転落。しかし、事故として処理されてしまっていた。
コンサート前日、森林浴に行く秋庭についていくコナン。
コナンの読み通り、秋庭は何者かに狙撃されそうになる。しかし、絶好のチャンスに狙撃しなかった犯人に対して、コナンは疑問を持つ。
コンサート当日
コンサート当日、ゲネプロ見学の為、先に来ていたコナン・蘭・園子・小五郎に少年探偵団と阿笠博士が合流する。元太は声が出ないかわりにリコーダーを持っていた。
ゲネプロでは、オルガン調律師のハンス・ミュラーが来ないと騒ぎになっていた。
ゲネプロの時にパイプオルガンの音が変だと気づいたコナンはオルガンのもとへ向かう。そこには、同じように疑問を感じていた秋庭怜子の姿があった。
コナンと秋庭は、オルガンの事を伝えようとオルガン奏者・堂本一揮を探すが、その最中、何者かに襲われ気絶してしまう。
一方、コンサート会場では、秋庭が行方不明という事で、ソプラノ歌手・千草ららが代役をつとめる。
声で110番へ電話をかける
コナンと秋庭の2人は、気づくとボートに乗せられ、貯水地の真ん中にいた。助けを呼ぼうとするコナンたちは、建物に備え付けられていた電話を発見する。
秋庭 :あそこの壁に電話があるじゃない?あれに手が届けば、助けが呼べるのに…
コナン:ちょっと待って、電話に手が届かなくても受話器を外せれば助けが呼べるかも。
秋庭 :どうやってそんなこと…
コナン:プッシュホンで電話をかけるとき、ピッポッパッって音がするでしょ?あれは、DTMF信号っていって、高低2つの信号音の組み合わせで、ダイヤルの番号を送信してるんだ。だからその音をうまく発声できれば…
秋庭 :電話出来るってわけね。
コナン:うん…110番の1は、697ヘルツと1209ヘルツの、0は941ヘルツと1336ヘルツの組み合わせだったはず。
秋庭:大丈夫。プッシュホンの音なら耳で覚えてるから。
受話器を外してしばらくすると、電話がかけられなくなる為、チャンスは一度きり。コナンがボールを蹴り、受話器を外す。そして声で110番に電話をかける。
佐藤刑事・高木刑事を乗せた警視庁のヘリが、コナン達のもとへ到着し、爆発が起きていた堂本ホールへ向かう。
堂本ホールでは、もう10回以上も爆発が起きているが、ホール内は完全防火・完全防音の為、観客は爆発に気づかない。
コナン達は、屋上から建物内へ入りホールへ向かう。その途中、コナンは探偵バッジを通路に置いていく。
この探偵バッジ、何の為に置いていったのか初見ではわからなかったです。このページ下の感想部分で少し解説したいと思います。
爆弾を探しに行く佐藤刑事と高木刑事。ふたりは途中、捕らえられていたハンス・ミュラーを発見する。
美しすぎる歌声
コナンは、オルガンの音が爆弾と連動していることに気づき、さらにリモコンを持った犯人も見つける。秋庭は演奏を止めに行こうとするが、下手に演奏を止めるとリモコンで爆破されるかもと伝えるコナン。
秋庭 :3分…3分あれば足りる?
コナン:え…うん。だけど…
秋庭 :じゃ、頼んだわよ。探偵くん。
アメイジング・グレイスを歌い出し、時間稼ぎをする秋庭。
蘭はその歌声を聞いて、昔の事を思い出した。それは中2の時に新一とケンカしていた帰り道、仲直りのきっかけとなったのが河原で聞いた秋庭の歌声だったという事。
事件の真相。犯人と犯行動機
譜和 :やはり消しておくべきだったか…
コナン:消せねぇーよ。心を熱くする、この歌声だけは。
アメイジング・グレイスは、譜和の息子・相馬光が大好きだった歌。そして歌っている秋庭怜子は、息子が愛した人だから。
そう、犯人は譜和匠。
オルガンの音が違ったのは、パイプの中のひとつに、空気の流れを感知するセンサーが仕込んであったから。
その分だけ、パイプから出る音が微妙に違っていた。
パイプの中のセンサーが、空気の流れを感知すると、仕掛けられた爆弾に信号が送られて爆発する仕組み。
ゲネプロの時に爆発しなかったのは、起爆装置がオフになっていたから。
譜和が犯人だと疑った根拠は3つ。
- 絶対音感を持っているはずの譜和が、ゲネプロの時、オルガンの音の違いを指摘しなかった。
- 譜和の車のナンバー“5283”が、息子の誕生日と同じだった。
- 堂本の家にあった譜和の若い頃の写真が、息子にそっくりだった。
4人の音楽家を殺害した動機は、事故でなくなった息子の復讐。殺害現場にフルートのパーツを置いたのは、警察に連続殺人が3件で終わりだと見せかける為の布石。
コナン:絶対音感を持つ人を恐れるのは、絶対音感を持つ人だけ。
最初の事件で、河辺奏子を爆発に巻き込んだのは、音の違いに気づく可能性のある絶対音感を持っていたから。
秋庭も絶対音感を持っているが、息子の愛した人に爆弾は使えない。だから、命を落とさない方法で、彼女がステージに立つのを妨害した。
リコーダーの音で伝えるメッセージ
推理を披露し、犯人を追い詰めるコナン。しかしその時、堂本がアドリブでオルガンを弾き、爆弾の起爆装置となっていた音の鍵盤を押してしまった。
爆発が起こるはずだったが、先ほどの2分間でコナンがパイプのセンサーを外していた為、爆発は起こらなかった。
それに対して、リモコンで爆弾を爆発させ、堂本を殺そうとする譜和。
コナンは、時計型麻酔銃で譜和を狙うが、襲われた時のはずみで使えなくなっていた。
佐藤刑事が、犯人を狙撃しようと隣の部屋から狙うが、コナンが邪魔で撃てなかった。
その事に気づいた灰原は、元太の持っていたリコーダーを吹いて、コナンにメッセージを伝える。
コナン:ミラララファ…SHOOT(シュート)…狙撃!
譜和 :ん?なんだ今の音は?
コナン:試合終了のホイッスルさ。
コナンがしゃがんだ瞬間、佐藤刑事が譜和の持っていたリモコンを狙撃し、高木刑事が部屋に突入する。
相手を信じるということ
譜和は、息子の復讐だけでなく、全てを消し去ろうとしていた。
身勝手な堂本、堂本がピアノ奏者を辞めるきっかけとなったパイプオルガン、堂本ホール、それを聞きに来る音楽家や客の命さえも。
譜和「あんなに愛していた音楽までも、ただの耳障りな不協和音に変わり果ててしまったのだ」
譜和は、自分には何も残されていないと感じ、絶望していた。
堂本がピアノ奏者からオルガン奏者に転身した為、35年間やってきた専属調律師の仕事を失った。
だからといって他の人につくのは、プライドが許さなかった。
そして、堂本がピアニストを辞めたその2年前、妻が病死。その1年後に息子が事故死してしまった。
館長の仕事を引き受けたのは、オルガンに細工をしたり、ホールに爆弾を仕掛けやすくなるから。
譜和「静かな夜を取り戻さんが為に」
事情を聞き、部屋に入ってきた堂本は、ピアニストを引退した真実を語る。
専属調律師である譜和の調律が微妙に狂ってきていたが、譜和のプライドを考えると、それを指摘することが出来なかった。別の調律師と組む気にもなれないので、ピアノから引退した。
全ては譜和の事を考えての決断だったのだ。
園子:私がもし、親友に同じ事をされたとしたら、それは何かのっぴきならないわけがあるんだろうなぁーって…そしてそれは、もしかしたら親友本人よりも私の事を思いやってくれている事かもしれないって…そう考えると思うわ。なぜなら、その親友を信じているから。
蘭 :あたしも同じです。
めずらしく犯人を説得したのは園子だった。想いは、きちんと言葉にして伝えなければ伝わらないという事。
堂本ホールの外に出た一同。
灰原は、リコーダーの音をアルファベットに置き換えたメッセージについて阿笠博士に説明する。
灰原:(それに、私も彼を信じてるから。…相棒としてね)
この灰原のセリフは、前作『紺碧の棺(ジョリー・ロジャー)』と繋がっている。コナンと灰原が交わした会話に注目。
この映画では
- 譜和と堂本
- 蘭と園子
- 灰原とコナン
それぞれの信頼関係にスポットを当てたシーンがある。お互いを信じるという事は難しいけれど大切だというのが伝わってくる。
その時、どこからかバイオリンの音色が聴こえ、それが新一の弾き方に似ていた為、蘭は新一を探す。しかし蘭が向かった先にはコナンが居た。
コナンは、いつも通り、新一からの伝言を伝えるフリをする。本当、コナンって演技派。
蘭「今さら来ても許してやんないんだから。…バーカ」
アメイジング・グレイスは許しの歌
エンディング後のエピローグでは、コナンと蘭と秋庭が、思い出の河原を訪れていた。
秋庭「でも許すことにしたの。だってアメイジング・グレイスは許しの歌だから」
これは、ふたつの事柄にかかっていると考えた。このページの下の考察部分で解説。
蘭いわく、新一のバイオリンには変な弾き癖があるという事ですが、私にはその違いがよくわかりませんでした。
気になる人は、じっくり聴き比べてみたらわかるかもしれませんね。
『戦慄の楽譜(フルスコア)』ネタバレ感想
見せ場がなくてもったいない
これといった見せ場がなかった印象。
蘭と新一のラブコメも、アメイジング・グレイスに関する思い出話がさらっと披露されるだけだし、アクションとは無縁の音楽がテーマという事でアクションシーンもなし。
音楽を題材とする試み
見せ場はないが、音楽を取り入れたのは面白かったと思う。
普段のセリフと歌唱シーンとでは違う人が声を演じているだけあって、アメイジング・グレイスを歌うシーンは本当に美しい歌声。思わず聴き入ってしまう。
コナンのパートナー
今作は、秋庭怜子がコナンのパートナーとして活躍する。
最初は高飛車で嫌な印象しかなかったが、行動を共にしていく事で、秋庭怜子の優しい面がどんどん見えてくる。ゲストキャラクターをコナンのパートナーにするというのもたまには良いかもしれない。
ただ、レギュラーキャラクターの登場シーンがもう少しあればなぁというのが率直な感想。どちらかのシーンを増やすと片方が控えめになってしまうのは仕方ないが。
声で電話をかける
『戦慄の楽譜』で一番印象に残ったシーン。
声で電話はありえない!というのが正直な感想だった。 しかし、2009年6月5日放送の『探偵!ナイトスクープ』という番組で実際に検証し、成功していた。
音大で声楽をやっている学生さんに協力してもらって、1時間練習をした後に、実験開始。見事、電話をかけることに成功していた。
実際に成功するとは思わなかったし、これを映画に取り入れようと思った作者がすごいと思った。
ただ素人のコナンに、あの発声があんなにすぐ出来るかと言われると、そこは漫画の世界ということで納得するしかない。
『戦慄の楽譜(フルスコア)』の考察
探偵バッジの意味
コンサートホール内に入る前に、コナンが通路に置いた探偵バッジについての解説です。
完全防音のホール内に入ってしまうと爆発の音が聞こえなくなるので、ホール外である通路に探偵バッジを置き、爆発の音を拾おうとした。
堂本ホールの柱の数は23本、そしてホール内を爆発するのに1回。犯人は、合計24回爆発を起こそうとしていたので、残りの爆発があと何回かを把握する為に。
ホール内で、オルガンの音と爆発の関係に気づいたコナンは、爆発が起こった直後に「くっそぉ、やっぱりあの音と連動してやがる!」と言っていたので、追跡メガネを介して音を拾っていたんですね。
アメイジング・グレイス
秋庭が、アメイジング・グレイスは許しの歌だから、相馬を殺した4人を許す事にしたと言っていました。
新一と蘭がケンカをしていた時に、河原でアメイジング・グレイスを聴いて、なんとなく仲直りしたというエピソードも、許しの歌というキーワードに紐づけたエピソードだったのかなと思いました。
また、エンディング前のシーンで、新一の演奏したアメイジング・グレイスを聴いた蘭は、「今さら来たって許してやんないんだから。ばーか」と言っていました。これも、言葉ではそう言っていますが、本心では許していたのだと思います。
コナンの音痴の謎
『戦慄の楽譜』で、コナンが絶対音感の持ち主だということがわかりました。コナンの音痴っぷりから考えると意外な特技ですよね。
絶対音感を持っているのに音痴?そんなのあり得るの?って思いましたが、実際そういう方はいるみたいです。なので、全くおかしな事ではないのです。
では、絶対音感を持っているのに、なぜ音痴なのかという理由を考察してみました。可能性がありそうなものをいくつか挙げてみます。
コナンと秋庭が声で電話をかけるシーンと、秋庭の「コナンくん、またハモろうね」というセリフから、下記のように推測できます。
DTMF信号を送信するには、高低それぞれの周波数の音を出さなければいけません。恐らく、秋庭が高い方、コナンが低い方の音を出したと思われますが、ということは聴いたことのある音なら正確に発声することが出来るというのがわかります。
聴いた音の音程もわかるし、聴いた音を正確に発声することが出来る。しかし歌わせると音痴。可能性としては…
- リズム感がない
- 歌は歌詞がついている為、そっちに気をとられると音が出せなくなる。
- 音はわかっていても音域が狭くて、その音程の音を出せない。
- 誰かが横で歌わないと音程がとれない→みんなで歌っても音痴と言われているシーンがあったので違う
3に関して。他の子供たちと比べて、声の高さがそんなに違うわけではないので、可能性は低いかと。
となると、1か2のどちらか、もしくは両方という可能性もありますね。
まとめ
コナンの意外な特技が明らかになった今作。これといった見せ場はなかったものの、わりと落ち着いた雰囲気の映画で個人的には好きでした。
