「ルックバック」に込められた意味を考察&ネタバレ解説!藤本タツキの半生が描かれている?

2021年11月22日

「ルックバック」に込められた意味を考察&ネタバレ解説!藤本タツキの半生が描かれている?

藤本タツキ先生による読み切り作品「ルックバック」。

2日で400万以上の閲覧数を記録したり、Twitterでトレンド入りするなど公開直後から大きな注目を集めている作品です。

このページでは、「ルックバック」というタイトルに隠された意味の考察や、「読んでみたけどよくわからなかった」という方に向けて内容をネタバレ解説していきます。

※ルックバックのネタバレを含みますのでご注意ください。

まだ「ルックバック」を読んでいない方は、先に漫画を読んでから当記事を読むことをおすすめします。

藤本タツキ「ルックバック」 タイトルに込められた意味を考察

ネット上でも言われていますが、読み切り「「ルックバック」」には、京都アニメーション放火殺人事件への追悼の意味が込められているのだと思います。

京都アニメーション放火殺人事件が起きたのは、2019年7月18日
読み切り「ルックバック」が公開されたのは、2021年7月19日

公開のタイミングや、ルックバックのストーリー的にも追悼の祈りと考えて間違いないと思います。

さらに、「ルックバック」というタイトルには、追悼以外の意味も込められています。

印象的な言葉やシーンはすべてがタイトルにかかるようになっていて、タイトル回収が素晴らしい作品でもありました。

  1. 「ルックバック」→Oasisの「Don’t Look Back in Anger」という曲を連想させる
  2. 「ルックバック」をそのまま訳すと「振り返る」という意味
  3. 「ルックバック」には「背中を見る」という意味もある

1:「ルックバック」→Oasisの「Don’t Look Back in Anger」という曲を連想させる

読み切りのタイトルと作中に描かれたワードをあわせると、Oasisの「Don’t Look Back in Anger」という曲が浮かび上がってきます

  • タイトルの「ルックバック」
  • 2ページ目の黒板に描かれた「Don't」
  • 最後のページ左下の雑誌「In Anger」

Oasisの「Don’t Look Back in Anger」という曲は、マンチェスター・アリーナで起きた爆発物事件の追悼集会で合唱された曲です。

Oasisは爆発物事件が起きたマンチェスター出身のアーティスト。
労働階級出身のロックバンドとして地元の人から多くの支持を集めています。

追悼の曲として浸透している「Don’t Look Back in Anger」を作品に入れるあたり、「ルックバック」には追悼の意味が込められているのだと思います。

2:「ルックバック」をそのまま訳すと「振り返る」という意味

タイトルの「ルックバック」をそのまま訳すと「振り返る」という意味です。

作中では、事件で大切な相棒を失った藤野が、今までの思い出を振り返るシーンがあります。
その後、悲しみを乗り越えて前を向いて進んでいく藤野。

この「振り返る」という言葉から、「悲しい出来事を振り返ることもあるけれど、乗り越えて前を向いて歩いていこう」という間接的なメッセージが込められているのではないでしょうか。

3:「ルックバック」には「背中を見る」という意味もある

タイトルの「ルックバック」には「背中を見る」という意味もあり、作中では「背中」が重要なポイントになっています。

例えば、以下のシーン。

  • 登場人物の背中で、時間の経過を描く
  • 藤野が京本の(着ていた服の)背中にサインをした
  • 2人の少女のうち、京本は背景担当
  • 「京本も私の背中見みて成長するんだな」という藤野のセリフ
  • 「背中を見て」という4コマ漫画→藤野が服の背中に書いたサインを見る

「背中」というキーワードだけで、こんなにも伏線を散りばめられるのはすごいです!

登場人物の背中で語るストーリー

作中で印象に残っているシーンのひとつが、登場人物の後ろ姿で春夏秋冬を感じさせるシーン。

セリフや説明文、効果音などもなく、背中の描写だけで時間の流れや、感情などが伝わってきました。
ただただ、すごかったです。

藤野が京本の(着ていた服の)背中にサインをした

京本が藤野にサインを求めた際、色紙を持っておらず、着ていた服の背中にサインを書いてとお願いしました。

終盤では、

  1. 「背中を見て」というタイトルの4コマ漫画を見る
  2. 部屋に入って背中の方を振り返る
  3. 背中にサインが書かれた服を見る

という流れのシーンがあり、藤野が悲しみから立ち直るきっかけになっています。

2人の少女のうち、京本は背景担当

作中では、藤野と京本のふたりで漫画を描いていくのですが、京本は背景(バック)担当です。

「京本も私の背中見みて成長するんだな」という藤野のセリフ

藤野「京本も私の背中見みて成長するんだな」

(引用:ルックバック 藤本タツキ)

藤野が、京本に向かって言ったセリフです。

「ルックバック」のラストシーンが、「背中を見て」と言っていた藤野の背中で終わるところも好きでした。

「背中を見て」という4コマ漫画→藤野が服の背中に書いたサインを見る

if世界と現実世界をつないでいる4コマ漫画。
京本が描いたのか藤野が描いたのか定かではないですが、「背中を見て」というタイトルの4コマ漫画になっています。

その後、京本の部屋に入った藤野が“背中”側に掛けてあった服(“背中”にサイン入り)を見る…という流れ。

タイトル回収がものすごくて、絶句です…。

「ルックバックがよくわからない」という方に向けてストーリーをネタバレ解説

藤本タツキ先生の「ルックバック」は、漫画家を目指す2人の少女を中心とした読み切り作品です。

京アニ事件を想起させるセリフなど一部修正が加えられたり、公開当初から話題になっています。

藤野と京本の出会い

クラスの学年新聞で4コマ漫画を担当していた小学生の藤野。
藤野が描く4コマ漫画はまわりからの評判も良く、自分でも絵が上手いと自負していました。

先生からの提案で、学年新聞に掲載する4コマの1枠を京本に譲ることに。

藤野は、京本が描いた4コマを見て驚愕
自分より絵が上手い奴がいるという悔しさから、毎日必死で絵を描き続けます。

2年経っても埋まらない京本との画力の差に現実を見た藤野は、絵を描くことを辞めてしまいます

卒業式の日、不登校の京本へ卒業証書を届けるよう頼まれた藤野。

藤野は、京本の部屋の前に置いてあった画材を見て、4コマを描きます。

藤野が描いた4コマは、京本の部屋の中に滑り込み、それを見て急いで部屋から飛び出してきた京本。

京本は藤野の4コマの読者であり、ファンでした。

絵が上手い京本から、「天才」とまで言われた藤野は嬉しさのあまり再び漫画を描き始めるのです。

中学生漫画家・藤野キョウ誕生

藤野と京本は2人で漫画を描き始めます。

藤野と京本で「藤野キョウ」。

中学生コンビが描いた漫画は見事に雑誌の賞を受賞。

順調に漫画家としての人生を歩んでいるように見えた藤野と京本ですが、転機が訪れます。

「藤野キョウ」として高校卒業後に連載の話が挙がっている最中、「美術の大学に行きたい」と藤野に打ち明けた京本。

京本の美大進学に反対しつつも、藤野は「藤野キョウ」として漫画を描き続けます。

事件発生

2016年1月10日。

藤野が漫画を描いていると、テレビからあるニュースが流れてきました。
それは京本の通う美術大学で、男が刃物を振り回す事件が起きたことを知らせるニュース。

死亡者12人、重傷者3人の凄惨な事件でした。

犯人の動機は「ネットに公開していた絵をパクられた」というもの。

京本は事件で亡くなり、藤野が連載していた「シャークキック」は休載。

4コマでつながるif(もしも)の世界

京本の家を訪れた藤野は、昔、卒業証書を届けに来たときに自分が描いた4コマ漫画を発見。

自分が4コマを描かなければ京本が部屋から出ることもなく、2人が知り合うこともなく、そして京本が死ぬこともなかったのではないかと考えます。

藤野が破り捨てた4コマが、扉の下を通って過去の京本のもとへ。

京本は扉の下から飛んできた4コマの「出てこないで」というセリフを見て、卒業証書を届けに来た藤野に対して居留守を使います。

4コマが扉を挟んで、藤野から京本へ届くシーンはif(もしも)の話だと思っています。

最初に描かれていたのが、藤野と知り合った京本の話(現実の話)

そして扉のシーンよりあとに描かれているのが、「京本が生きていたら…」と考えている藤野の願望の話

藤野と知り合わなかった世界線の京本も美術大学に進学

奇しくも、藤野と知り合わなかった世界線の京本も美術大学に進学するルートをたどります。

そして、藤野と知り合っていた時の世界線と同様に、2016年1月10日事件に巻き込まれます。

校内に侵入した男と遭遇した京本。

男は工具で京本に襲い掛かりますが、たまたま通りかかった藤野が男を撃退。

こちらの世界線の藤野は空手を習っており、ランニングの途中に通りかかったとのこと。

藤野と京本は美術大学での事件をきっかけに知り合い、学年新聞に掲載していた4コマの話をします。

if世界と現実世界をつないでいる4コマ漫画で藤野が立ち直る

京本からの4コマが扉の下を通って藤野のもとへ届きます。

扉を境に、京本(if世界)から藤野(現実)の世界へと切り替わります

ドアの下から藤野のもとへ飛んできた4コマのタイトルは「背中を見て」。

「背中を見て」は、以下の3つにかかっている言葉です。

  • 4コマに登場する藤野の背中に工具が刺さっている
  • 部屋に入った藤野の背中側にサイン入りのちゃんちゃんこが飾ってある
  • ちゃんちゃんこの背中にサインが描かれている

そして、立ち直って漫画を描き続ける藤野の様子を背中で物語る…という終わり方です。

「背中を見て(ルックバック)」という伏線がいくつも張り巡らされている、すごい作品でした。

ルックバックのラストの描写の意味

4コマがドアのすき間に入ってから、藤野のもとに別の4コマが届くまでの描写は、if世界(「もし京本が生きていたら…」という藤野の強い想い・願望)が描かれているものだと考えています。
しかし願望とは裏腹に、現実世界では京本が4コマを飛ばしたわけではなく、窓に貼ってあった4コマが勝手に飛んでいっただけ

なんとも言えない寂しさ、虚しさ、喪失感を感じる描写です。

ルックバックの伏線・オマージュを考察

ルックバックを読んで気になったシーンの考察や、取り入れられているオマージュをまとめました。

チェンソーマン デンジの扉・背景

京本が美大で描いていたドアは、セルフオマージュ。
チェンソーマンでデンジの夢の中に出てきたドアと同じです。

あとは、京本が見ていた「背景美術の世界」という本に載っている背景は、チェンソーマンで登場しています

シャークキックの単行本11巻が複数冊あった理由

「ルックバック」作中のシーンで、11巻が複数冊、描かれたシーンがあります。

「藤野が11巻を複数買った」という考察が多く見られますが、個人的には「11巻が複数冊あったのは書店の本棚だから」だと考えています。

以下のようなコマ割りで、藤野の部屋→書店に場面が切り替わっているのではないでしょうか。

藤野の本棚
 ↓
11巻アップの描写
 ↓
複数冊の11巻(書店の本棚&ポップ)

書店で11巻だけ複数冊おいてある理由は、人気作品だから
アニメ化などで人気が急上昇した作品は、最新刊が大量に入荷されているのを見かけます。

シャークキックもアニメ化が決まり、最新刊の入荷冊数が多くなったことを表現しているのだと思います。

著作者さん側の意見としては、アニメ化などの重版分として11巻だけ多く届いたという見方でした。

シャークキック11巻とチェンソーマン11巻

作中のシャークキックは単行本11巻まで出ていて、「このつづきは12巻で!」と書かれています。

同様に、チェンソーマンもコミックスは11巻まで発売(第1部終了時点)。
第2部の連載が始まれば12巻以降も今後発売されます。

「このつづきは12巻で!」という記載も、そのままチェンソーマンに当てはまります

「ルックバック」は、ところどころ作中と現実世界がリンクしているのも面白いです。

京本の部屋にシャークキックの単行本1巻・2巻が複数冊あった理由

京本の部屋にシャークキック1巻・2巻が複数冊あったのは、単純に藤野の連載を応援していたからだと考えています。

机の上にあった書きかけのアンケートも、シャークキックを応援していた証拠です。

if世界での京本の利き手、4コマの筆跡

現実世界では京本は右利きですが、if世界では左利きになっているところもあります。

また、「背中を見て」の4コマ漫画の筆跡が京本の筆跡とは異なっています
どちらかというと藤野の筆跡に近い字です。

上記についてはTwitterで、「なるほど」と思う考察をされている方がいました。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の本

ルックバックのラストでは、映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のパッケージと同じ本が置いてあります

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のもとになっているのは、女優シャロン・テートがカルト教団に殺害されてしまった事件。

映画ではハッピーエンドで終わりを迎えます。
しかし、ルックバックではハッピーエンドと見せかけて辛い現実に戻されるという、予想を裏切る描写をしているあたりが面白いです。

「ルックバック」には藤本タツキの半生が描かれている?

「ルックバック」の登場人物と、作者・藤本タツキには共通点が多いです。
このことから、読み切りには藤本タツキの半生が描かれているのでは?と噂されています。

「ルックバック」に登場する藤野・京本と、藤本タツキの共通点は以下のとおりです。

  • 物語の登場人物は“”野と京“”で、作者は“藤本”タツキ
  • 作者自身も若い頃(高校時代)から漫画を描いていた
  • ファイアパンチの連載開始までに、7本の読み切りを誌面に載せていた(未公開は除く)
  • 京本が通っていた大学のモデルは、作者・藤本タツキの出身校である東北芸術工科大学
  • 作中で藤野が連載しているのは「シャークキック」、藤本タツキの作品は「チェンソーマン」と「ファイアパンチ」
  • 作中のシャークキックは単行本11巻まで出ている、チェンソーマンもアニメ化決定の時点では11巻まで(第1部完)

【終わりに】「ルックバック」に込められた意味を考察&ネタバレ解説まとめ

  • 「ルックバック」というタイトルは、Oasisの「Don’t Look Back in Anger」という曲(追悼曲)を連想させる
  • 「ルックバック」には他にも「振り返る」「背中を見る」といった意味が込められている
  • 4コマのシーンは、藤野の願望(if世界)の話ではないか
  • ルックバックにはチェンソーマンのオマージュがある
  • ルックバックは藤本タツキ先生自身の半生が描かれているのではないか

「ルックバック」はジャンプ+で無料公開された後、単行本として発売されました。

Amazonなどのレビューでも高評価を得ており、「このマンガがすごい!2022」へノミネートされる可能性も高いのではないでしょうか。

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