2005年公開の劇場版第9作目となる『水平線上の陰謀(ストラテジー)』は、毛利小五郎小五郎が大活躍する作品。
テーマソングはZARDの夏を待つセイル(帆)のように
キャッチコピーは、「忘れはしねぇよ、オマエのことだけは…」「オマエを、絶対に守る」。
陸と船上の2つの場所で起こる二重(デュアル)サスペンスにも注目です。
このページでは、『水平線上の陰謀(ストラテジー)』の内容や感想をまとめています。
ネタバレありますのでご注意ください!
『水平線上の陰謀(ストラテジー)』のあらすじ・内容
舞台はアフロディーテ号の船上
園子のはからいで、八代グループの豪華客船アフロディーテ号に乗船する事になったコナンたち。
八代グループといえば、15年前に第一八代丸が、氷山にぶつかり、船長と乗組員一人が亡くなるという事故があった。
その事故のときの副船長・海堂 渡が、今回のアフロディーテ号の船長をつとめていた。
さらに半月前には、西多摩市で設計士・八代英人が、崖から落ちて死亡する事件が起きていた。
船内のパーティを楽しむコナンたちだったが、一緒に食事をしていた招待客の1人、シナリオライター・日下ひろなりが物語序盤から怪しい行動をとる。
翌日、船内でかくれんぼをしていた少年探偵団、園子、蘭だったが、かくれんぼの最中に園子が何者かに襲われ、霊安室に閉じ込められてしまう。
時おなじくして、八代グループ会長・八代 延太郎がマリーナの搬入口から海に突き落とされ、娘の八代 貴江も部屋で殺害されていた。
高木:それにしても、空でも海でも毛利さんの行くところ事件だらけですねぇ。
白鳥:次は宇宙ですか?ロケットにでも乗って。
警視庁のヘリでやってきた高木刑事と白鳥警部に散々言われる小五郎だが、コナンほどではない。
警視庁の調べもあり、捜査線上に怪しい人物として浮上したのは、終始怪しい行動をとっていた日下ひろなり。
しかし、日下には犯行時刻に設計士・秋吉美波子と電話をしていたという、確かなアリバイがあった。
犯人は日下ひろなり?
ウェルカムパーティーでへっぽこ推理を披露した小五郎は、笑ってごまかして逃げてしまう。
その後、見かねたコナンが、阿笠博士の口パクによる推理ショーを披露。
阿笠「みなさん、クルーズのもともとの意味をご存知かな?海賊行為だそうじゃ。獲物を求めてクロス状にジグザグ航海することからきたらしい。そしてこの船の中にも海賊がいた。他人の財産ではなく、命を奪う殺人者という名の海賊がな」
コナンが犯人だと指摘したのは、シナリオライターの日下ひろなり。
秋吉美波子と電話していたというアリバイは、ICレコーダーを使ったトリックだった。
それを指摘され、音声は消したはずだと口走り、あっさり墓穴をほってしまう日下。
コナン&阿笠「こういう大事なものは、ちゃんと確認せんと命取りになるからのう」
阿笠博士が提示した日下の音声が入ったICレコーダーは、実は偽物。
コナンが蝶ネクタイ型変声機で声を吹き込み、証拠を捏造したのだ。
決定的な証拠は、日下の赤毛の髪に混じった黒っぽい髪の毛。ついた血が乾いて色が変わった。
そして、首に巻いたスカーフのしたに残っていたあざ。
園子を襲ったのも日下。
犯行動機は、父親の復讐。
15年前に八代商船の貨物船の事故で死んだ乗組員は、日下の父親だった。
日下は、最後の標的である海藤を爆弾で殺すつもりだった。
持っていた爆弾のスイッチをはずみで押してしまい、逃走。
モーターボートで逃げる日下を、コナンと少年探偵団が追う。
コナンくんは、モーターボートの操縦まで出きるんだね。何でもできるコナン君。
哀ちゃんも途中で操縦任されたけど、当たり前のように操縦してる。
日下めがけてサッカーボールを蹴るコナン。
蹴ったサッカーボールが外れる!と、思いきや、麻酔銃で日下を眠らせる。
これで事件解決だと安心するが、警察が追ってきて怒られる少年探偵団。
一方、アフロディーテ号では乗客に避難指示が出ていた。
園子・蘭は一緒に避難しようとするが、蘭は少年探偵団にもらったプレゼント(金メダル)を探しに行くと言う。
蘭は落とした場所を思い出し無事にプレゼントを発見するが、船が揺れて頭をぶつけて気絶してしまう。
コナン:なんだろうな、なんかスッキリしねぇんだよ、このまま進じまうと取り返しがつかなくなるような…そんな感じが。
光彦 :もしかして、事件のことですか?
コナン:ああ、たぶん…だろうな。
歩美 :コナンくん
灰原 :事件…ほんとにそれだけ?工藤くん
事件の矛盾に気づいたコナン。
- 日下の電話トリックが単純すぎること
- 日下が投げ飛ばしたして海に落としたはずの八代会長の背中に、果物ナイフが刺さっていたこと
- 園子を襲った時間と八代貴江社長を襲った時間がほぼ同時刻だということ
これらの点から、犯人は別にいると推理したコナンは船に戻る。
真犯人は秋吉美波子
日下はミスリードで、真犯人は秋吉美波子。
美波子は15年前の事故で亡くなった沖田船長の娘だった。
美波子は半年前、取材で会った日下の様子がおかしいと思い、トイレにたったすきにパソコンをみて15年前の事件の真相を知った。
美波子が、海藤を殺そうと銃の引き金をひこうとした時に小五郎が登場。
小五郎「真相を解き明かすのが、探偵のさがなんでね」
小五郎には真犯人がわかっていて、美波子の持っていた銃をあらかじめ使えないようにしていた。
全ては美波子のシナリオどおり。
日下がアリバイ工作に自分のことを利用しようとしていることに気付いた美波子は、逆に日下を利用して全員を殺害した。
小五郎「俺は女とは戦わねぇ主義だが」
美波子「それって差別じゃない?」
自首すると見せかけて、殴ろうとしてきた美波子の手を止める小五郎。
小五郎がつけていた盗聴器つきカフスボタンで、小五郎と美波子の会話をモーターボートの上で聞いていたコナンは、船上へと急ぐ。
コナンが小五郎のもとに着いた瞬間、一瞬のすきを見せた犯人。
小五郎はすかさず、得意の一本背負い。
小五郎は、美波子が妃英理に似ていたから、「犯人が美波子じゃなければいい」と思って無実の証拠を見つけようとしていた。
そして辿り着いてしまったのが真実。
無事に事件が解決したかに見えたが、
コナン「ねぇ…蘭ねえちゃんは?」
蘭がいないことに気づく。
蘭を探すコナンと小五郎。
かくれんぼの時の蘭の一言を思い出し、無事に蘭を見つけ出す。
海上保安庁の救助ヘリが到着。
救助の途中、ヘリが揺れてコナンが船に落ちてしまう。
小五郎が手をのばし、それに捕まろうとジャンプをするコナンだが、手がとどかず海に落ちそうに…。
すかさず蘭がコナンの手をキャッチするが、さらに手が離れてピンチ!というところを、少年探偵団が作った金メダルに捕まり、間一髪。
「相手を思いやる気持ちのおかげで助かった」という素敵なストーリー。
『水平線上の陰謀(ストラテジー)』感想
この作品の素晴らしいところは、トリックをあばくストーリーと見せかけて最後に一変するところ。
というのも『水平線上の陰謀』では、序盤から日下ひろなりの怪しい行動に焦点が当たっています。
日下ひろなりの声優さんが山寺宏一さんという事もあり、「この人が犯人だ」と思ってしまうのです。
過去には『14番目の標的(ターゲット)』で、フリーザでおなじみの有名声優・中尾 隆聖さんが犯人の声を演じていて、とても印象的でした。
『14番目の標的』からコナン映画を見続けているファンは、より一層だまされたのではないでしょうか。
物語中盤のコナンの(阿笠博士の声を使った)推理ショーでも、日下の名前が出てきましたし、「やっぱり…」って思ってしまうんですよね。
ところがラストでその事実がひっくり返されるわけです。
さらに『水平線上の陰謀』はアクション少なめで、どちらかというとミステリーに重点を置いています。
伏線の張り方が見事で、全部ひとつの真実に繋がっていたのがすごいところ。
たとえば
- ICレコーダー
- カフスボタン
- 妃英理に似ていたこと
- 少年探偵団がプレゼントした金メダル
- かくれんぼ
- 小五郎が廊下ですれ違ったカップルを見ていたこと
このへんの伏線が最後の方で一気に回収されるので爽快でした。
小五郎の神回とも呼ばれるだけあって、後半の活躍は見事でした。
「妃英理に似ているから犯人じゃなきゃいい」と思いつつ、証拠を探していたのも小五郎らしくて素敵ですね。
アクション派のファンは物足りなさを感じる作品だとは思いますが、たまにはこういうミステリー重視の作品も良いと思います。